アスペルガーの適職は大学教員か?

少し前までは、自閉症スペクトラム(とりわけアスペルガー症候群)などの発達障害者は、大学院博士課程に進学して大学教員など研究者を目指すのが適性上よいと言われていました。実際、いろいろな本を見ると「研究者はおすすめ」と書いてあります。

しかし、これは現在完全に無理になったと強く感じます。まず、大学教員で発達障害と思われる人がずいぶん減りました。変な例かもしれませんが、いつもいる場所が違っていて会議で月1回しか会わなくても、何かの会合で一度会っただけでも、教員は面識のできた人にはほぼ必ず挨拶するんですよね。発達障害者にありがちな「職場では挨拶が必要ということを理解していない」人や、「本当に親しい人にのみ挨拶すべきで、知っているだけの関係が薄い人に挨拶するのは虚礼で不誠実」というマイルールを押し通す人はいません。既に、大学は発達障害者の職場ではないのです。

実際、こだわりやマイルールが強い発達障害者が大学教員になると、好きな研究以外しない、気に入った学生以外への教育を嫌がる、入試など校務を拒否するなど問題行動を起こすのは明らかです。大規模に人員削減されているのでこれは周囲に大迷惑になります。だから「それっぽい」人は採用されなくなります。

だいたい、定型発達の度合いが高い人が教授の多数を占めているわけですから、発達障害者が採用される余地はないわけです。今や地方公務員でもそうですが、一度採用したら解雇が難しい業種だと、問題を起こさなさそう/頼んだ仕事を妙な理屈こねずにやってくれそうな人を「安全側」で採用するのは当然でしょう。

例えば自閉症スペクトラム障害で他者との間合いが適切に取れないというのは、セクハラ・アカハラ・パワハラのリスクに直結します。無意識にハラスメントしてしまうおそれがあるのはかなり危ないです。これに例のプレコックス感が加わると、「ただでさえキモいのがベタベタしてくるからセクハラ」とか受け取られてしまいます。あと、マイルールで変な会計処理をしてコンプライアンス違反といったリスクもあります。研究のため寄付されたお金を一部大学に渡すルールに納得できず、私用しないのだからとマイルールを決めて個人会計してしまうとかですね。発達障害者がしばしば持つこだわりの強さは明らかにマイナスに作用します。

もし重大なハラスメントを起こされれば処分決定までの「謹慎」で他の教員に負担がかかりますし、辞職されても後任補充できないのが現状なので「問題ある人なら交代させればいいじゃない」にはなりません。あやしければ最初から採らないという方向にしかならないのです。後で皆が迷惑してはたまりませんから。

なので、「特に自閉症スペクトラム障害の発達障害者の適職には大学教員があります」というのは、もうありえない話なのです。大学院の博士課程は出られるかもしれませんが、望む就職は無理でしょう。以上、そういう感じでとある大学の最終面接に落とされたことのある人間の体験談でした。

ついでに言うと、以前のやり方を墨守して新しいことを取り入れない/しない/興味も持たないタイプの自閉症スペクトラム障害者も「一度決めたことしかしてくれなくて変えようとするとキレられる」などと煙たがられると思います。ADHDが適度に混ざっていない純粋なアスペルガーには厳しい世の中になりました。