アスペルガーは入試で排除されるか?

今後の社会、特に日本でアスペルガー症候群の当事者が排除されていくのではないかと、年末くらいからずっと気になっていました。

 

 

【ご注意】この記事は当事者としての私見や感想を多く含みます。また、私がアスペルガー症候群で診断を受けているのと、高機能群が話のテーマとなるため、自閉症スペクトラムという表記は敢えて用いません。

最近の大学入試をめぐる状況を見ていると、発達障害者、特にアスペルガー当事者が国立大学に(意図せず結果的にではあっても)入学できなくなっていくのではないかと思えてきています。

まずは2020年度から開始のセンター後継試験(新テスト)ですが、2015年12月22日の第9回高大接続システム改革会議で出された問題イメージで少し驚きました。

別紙3 「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」で評価すべき能力と記述式問題イメージ例【たたき台】 (PDF:816KB)

先行導入が予想される国語では、複数人の会話とされる文から状況を読み取り、共有されている内容を察知し、特定の人の次の発話を予測し、文章で書けという記述式問題イメージが提示されています。今回は具体的な事例になっていますが、実際には小説や詩など抽象度が高く感情の読み取り・推測を要求する問題も登場するでしょう。
現行のセンター試験では、アスペルガー当事者が不得意とされる小説や随筆でも、本文と問題文との語句の対応関係をスキャンして、本文と問題文が一致/語句が不一致/論理関係が逆にされているなどをチェックし正答を導く方法が可能です。私はこの方法でセンター国語を解いていたようで、論説文と小説文で同じように解いて正答率は変わりませんでした。一般的にアスペルガーは他者の感情の読み取りが必要になる小説文の問題は不得手と言われますが、この方法を一種の「パターン化されたゲーム」とできれば感情に関わる機能を用いないで対処可能と思われます。
そのパターン化で処理できないタイプの問題が出され、ゲームとみなして過集中する方法が取れない(パターンのある過去問を解いて高得点を出すことで本番でも高得点を得る)となると、アスペルガー当事者にはかなり不利な話なのかなと思ってしまいます。
国語でこれだとすると、英語や数学なども記憶やパタン処理で対処できない出題となっていくと予想できます。

また、センター後継試験(新テスト)に合わせて国立大学の個別学力検査も「1点刻みのペーパーテストをやめて人物本位の評価にする」となっています。
面接試験を拡大すればアスペルガーが優先的に落とされるのは目に見えていますが(大学教員にもそういう人は多いはずですけれども、アスペルガーはアスペルガーに対して「共感」し高い評価はできないわけです)、ここで注意しておきたいのはCBT(Computer Based Testing)の導入が言われていることでしょう。
先述のように1点刻み評価ができないので、CBTは適性検査として使われると予想されます。そうすると、一種の知能検査のようなものをやって「大学での学びに適性がない」と言って発達障害者をふるい落とすという方向性が出てくるはずです。
わかりやすい例で言えば「サリーとアン課題」の応用編を出すこと。私の場合、短期記憶が極端に悪いので、登場人物が複数いて状況が変わっていく問題文そのものが読めません(理解できません)。問題文全文を一度に出されて読み返せば何とかなるかもしれませんが、CBTで短時間に1文ずつ提示したり途中で分岐されたりしたら、手も足も出ませんね。
適用が統合失調症などにも及びますが、ウィスコンシンカード分類テストもCBTとの親和性が高いでしょう。途中での度重なるルール変更はアスペルガー当事者にかなりの負荷をかけますから、解答の様子を録画すればかなりの精度で検出できるはずです。この「適性検査」のデータを元に面接すれば、いっちょ上がり、と。
もちろん、一定以上の知能があるアスペルガー当事者は訓練で対応してくるでしょうけど、先の新テストによる基礎学力検査、CBTによる適性検査、さらに面接を組み合わせればかなり確実に排除できそうです。

企業が就活する学生に求める能力のトップに「コミュ力」が挙げられて久しいですが、コミュ力就活がコミュ力入試を要求する状況になってきたと言えそうです。想像するに、産業界から「国立大の卒業生にコミュ力のないやつが多くて困るから、アスペルガーなんてそもそも国立大に入れないようにしろ」という空気が出ているのでしょう。